【術後の看護】早期離床のメリットとは?具体的にどう離床する?

術後の早期離床をすすめるのはなぜ?

手術翌日には離床を促し、遅くとも術後翌々日には離床を開始する
ということが多いのではないでしょうか。

痛み止めを使ってでも早期離床をすすめていく理由や、
早期離床をすることで得られるメリット、
具体的にどうすすめていくか、注意点などをご紹介します。

早期離床の目的とは?

◎呼吸器合併症の予防
◎循環器合併症の予防
◎消化管合併症の予防
◎術後せん妄の予防
◎筋力低下の予防
  など

術後の合併症予防です。

早期離床のメリットとは?

◎胸郭が広がり、気道分泌物の排泄がスムーズになる
◎横隔膜が下がり、肺胞でのガス交換がスムーズになって無気肺予防になる
◎血流が良くなる、循環器合併症の予防になる

→創部の治癒促進、血栓形成予防、縫合不全予防、深部静脈血栓症予防

◎イレウス予防(術後の腸管麻痺の予防)
◎消化管が動くことで食欲へつながる(栄養)
・・栄養が経口で取れれば持続点滴の抜去、
◎自然排尿が促されて尿道留置カテーテルの早期抜去

◎挿入ルート類が早期抜去されることで精神面の安定(せん妄予防など)
◎活動することでせん妄予防、意欲向上
◎挿入ルート類が減ることで活動しやすくなる
 など

術後は、ほっておくと痛みのため臥床状態が続くことがあります。

例:
臥床状態が続く
→胸郭が広がりにくい
→十分な呼吸ができない
→痰が貯留しやすい
→無気肺、肺炎へ

臥床状態が続くと
廃用症候群へとつながっていきます。
廃用症候群って?消化器編
廃用症候群って?尿路系編

このような状態を作らないように
早期離床は大切です
ただ早期離床には良い事ばかりではなく、もちろんリスクもあります。

早期離床で考えられるリスクとは?

◎肺血栓塞栓症
・・突然の呼吸困難や胸背部痛、頻脈、SpO2↓、意識レベルの低下、
ショックなど
初めの一歩が一番怖いと言われます。

◎起立性低血圧
・・起き上がった時に血圧調整反射が正しく働かずに、
たちくらみや失神をおこすことがある

◎不整脈
・・術後、乏尿期になっている場合
(手術の侵襲や炎症によって血管外に体液がいってしまっている状態)
循環血液量が減って頻脈になりやすい

・・術後の利尿期はカリウムが低くなって
PVC(心室性期外収縮)をおこしやすい
→頻発するとVT(心室頻拍)への移行リスク

◎挿入ルート類の誤抜去、転倒 など

初めて離床する時には
必ず付き添い、状態の変化がないか観察し、
急激な状態の変化が起こっても
すぐに対応できるよう普段からイメージトレーニングしておきます。

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具体的な離床方法と情報収集、観察項目、中止基準とは?

離床を始める前に情報収集

◎術中の出血量
◎Hb
◎疼痛の程度
◎痛み止めを使用してどれぐらいの時間でどれぐらい効くか
◎不安が強い性格

術中や術後の出血によって貧血状態であると
座位保持が困難になってきます。
検査データやバイタルサインが落ち着いているかなど
を確認しましょう。

痛みに関しては感じ方は個人差があります。
その痛みに対して上手く薬剤でのコントロールできているか
確認していきます。

また痛みが起こることに不安が強い人は
身体の力をぐっといれて
より痛みを強く感じてしまう可能性があります。
息をゆっくり吐いてもらうなど
上手くリラックスできる声掛けが必要です。

術後というわけではありませんが、
「離床を行わない方が良い場合」

「離床を途中で中止した方が良い場合」
という基準がつくられています。

離床を行わない方が良い場合
☆安静時の心拍数が50回/分以下または120回/分以上
☆安静時の収縮期血圧が80mmHg以下(心原性ショックの状態)
☆安静時の収縮期血圧が200mmHg以上または拡張期血圧120mmHg以上
☆安静時より危険な不整脈が出現している
(ショートラン、RonT、モービッツ2型ブロック、完全房室ブロック など)

離床を途中で中止した方が良い場合
☆脈拍が140回/分を超えたとき(瞬間的に超えた場合は除く)
☆収縮期血圧に30±10mmHg以上の変動がみられたとき
☆危険な不整脈が出現したとき
(ショートラン、RonT、モービッツ2型ブロック、完全房室ブロック など)

これらを踏まえた上でスタートしましょう!

①ギャッチアップ

離床を始める前は臥床状態のことが多いと思います。
30度→45度→90度のように
少し時間をかけて段階的に行う場合もあります。

◎可能であれば心電図モニターを確認しながら行う
◎バイタルサインの変動の有無
◎気分不良の有無
◎疼痛の程度
◎挿入物(点滴やドレーンなど)が引っ張られていないか

を確認します。

痛みが強いと浅い呼吸になり、
酸素飽和度も低下することがあります。
痛みのコントロールをしっかりしてあげましょう。

②端座位にする

ギャッチアップをして何もバイタルに問題がなければ
次は足をベッドの下におろして端座位にします。

◎可能であれば心電図モニターを確認しながら行う
◎バイタルサインの変動
◎気分不良の有無
◎疼痛の程度
◎挿入物が引っ張られていないか

を確認します。

③立位になる、その場で足踏み

◎可能であれば心電図モニターを確認しながら行う
◎バイタルサインの変動
◎気分不良などの自覚症状
◎疼痛の程度

◎呼吸の変化
◎ふらつきの有無
◎挿入物が引っ張られていないか

を確認します。

転倒のリスクがあります。
立ち上がってすぐは大丈夫だったけれど、
徐々にしんどくなってきたりということもあります。

血圧は持続的に見ておきたいですが、
そんな持続的にずっと見られない状況が多いと思います。
そんな時は触診での脈拍、脈圧のチェックが役立ちます。

脈圧が低下していると
起立性低血圧などが起こり、
血圧が低下している可能性があるので

そのような時は座位に戻ったり、
臥床状態になってもらいましょう。

患者さんの顔色や表情などにも注意して
パルスオキシメーターを手に装着して行うなど
変化にすぐに気づけるようにして
安全に離床をすすめていきましょう。

すべての患者さんが上手く離床をはかっていけるわけではありませんが、
早期離床にはメリットがたくさんあるので、
患者さんの状態と相談しながら頑張ってほしいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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