看護師の患者に行動させるテクニック
「みんな〇〇してます」
「みんな〇〇と言っています」
「みんな」という言葉はとても便利です。
患者さんにこうして欲しいということがある時、
「私はあなたにこうして欲しい」と伝えると、
意見を押し付けられたような気分になります。
治療上必要なことで、
入院生活の中で「〇〇してください」と伝えるより、
「△△で入院された患者さんはみんな〇〇していますのでお願いします。」
と伝えた方が、ちゃんとしてくれる確率が高くなります。
「みんな」がなぜ人を動かすのか?
「みんな」という言葉の力は、
社会的なルール(守るべきこと)を意識させるからです。
みんなが守っているということを意識すると、
なんとなく逆らえず、
じゃあ自分も守ろうという気が起きるものです。
例えば、あなたが街中を歩いていて交差点がありました。
信号は赤です。
車も少なくて、今車は来ていません。
あなたは普段、赤信号でも車が来ていなければ渡る人です。
今日は普段と違い、たくさんの人がその交差点で
赤信号の信号待ちをしていました。
その時あなたはどういう行動をとるでしょうか。
普段は何も考えず渡ってしまう人も
「みんな信号待ちをしている」という状況を見ると
みんなと同じように信号待ちをする行動をしたり、
結果的に信号を赤信号で渡っても、
心のどこかで気になるところがでてきたりします。
この“心のどこかで気になる”ということがポイントです。
ちりも積もれば山となるということわざがありますが、
少し気になったことが繰り返しその状況になったら
そのうち「みんな」と同じ行動をしてしまうことが多いです。
なかなか治療上必要なことをしてくれない患者さんに
「みんなやっている」ということを
強調していけば、その患者さんも
しないといけない気になってくるかもしれません。
ある大学の同意を求める実験で、
学生に「あなたはこれについてどう思いますか?」と尋ねたところ、
約10%の学生しか同意を得られませんでした。
ところが、
「みんなこう言っているけれど、あなたはどう思いますか?」
と尋ねたところ、
約50%の学生が同意を示したというデータがあります。
人間、「みんな」という言葉に弱いです。
自分以外の他の多くの人たちが、「これは良いものだ」と言うと
あまり深く考えず、根拠はないのに
「良いものだ」と感じてしまう傾向にあります。
医療の現場で言うと、
例えば患者さんが尿道留置カテーテルの不快感を訴えられた時、
「みなさん違和感があって、尿意があるとおっしゃってます」
というと妙に説得力がでてきます。
バルンカテーテルなどは本当にみんな言っているのですが、
「みんな」という言葉は、使い方によって
安心感を与える効果もあるようです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。