人工呼吸器の目的と合併症から考える看護とは?

自然呼吸と人工呼吸の違いとは?

違いは“陰圧”か“陽圧”か!

自然呼吸
横隔膜が下がる
→胸腔内が広がる
→外気が肺に吸い込まれる

肺が呼吸筋によって外側に引っ張られて
外気がすっと吸い込まれる(吸気)

吸気・・外肋間筋が収縮して
胸郭が広がると胸腔内の容積が拡張して
肺が一緒に拡張すると空気がはいってきます。

呼気・・もともと肺自身収縮しようとします。
内肋間筋が収縮して胸郭が小さくなります。
腹筋壁の収縮により横隔膜が挙上すると
胸腔内の容積が小さくなります。

すると空気が排出されます。
一度横隔膜や胸郭を意識して
呼吸をしてみてください。
するとイメージがつきやすいです。

人工呼吸
ガスが送り込まれる
→ガスが肺に到達する・・胸腔内が広がる
→横隔膜が下がる(肺が広げられる)

人工呼吸の送気によって肺を押し広げる
・・ゴム風船を口でふくらませるイメージ

こう考えると自然呼吸では
横隔膜を利用して
肺が下方にも引っ張られていましたが
人工呼吸では横隔膜の利用が乏しいため
肺の下の方まで空気が入りにくい事が
イメージできると思います。

それを防止するためにPEEP(呼気終末陽圧、つまり圧)
をかけて肺の虚脱を予防していきます。

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人工呼吸の目的とは?

1.適切な換気量の維持
2.酸素化の改善
3.呼吸仕事量の軽減
4.全身管理の一環

1.適切な換気量の維持

換気運動に関わる呼吸中枢や神経系、胸郭、呼吸筋、
気道の障害で適切な換気量(換気量・呼吸数)が維持できない場合に
補助的に行います。

2.酸素化の改善

人工呼吸を使用していると
適切な酸素投与ができます。

例えば酸素マスクなどでは吸入できる酸素は
5~6L/分の酸素流量で吸入酸素濃度は約40%となります。

また呼気終末陽圧(PEEP)をかけることで
広がりにくくなった肺の虚脱を予防できます。

3.呼吸仕事量の軽減

人が換気をするためには呼吸筋を使用します。
筋肉を使用するということは
酸素も消費するし、エネルギーも消費します。

人工呼吸器を使用すると
呼吸をすることでおこる酸素消費量、
エネルギーの消費を軽減します。

4.全身管理の一環

換気を維持したり、酸素化の改善や呼吸仕事量を軽減させて
全身状態が良くなるまで人工呼吸器を装着して
患者さんの呼吸を代わりに行います。

人工呼吸の合併症から看護を考える

人工呼吸の合併症

◎肺損傷
◎肺炎
◎酸素中毒

◎無気肺
◎気胸
◎循環動態の変動

◎肺損傷

原因・・肺の過膨張、肺胞の虚脱と再開放による擦れ

予防・・一回換気量、気道内圧を制限、適切なPEEP

看護師ができること
・・全身状態の観察、モニタリング、指示通りの呼吸器設定になっているか

◎肺炎

原因・・胃の細菌が気管内に逆流、
口腔・鼻腔の最近が気管内に流入、
呼吸器回路汚染

予防・・口腔内を清潔に保つ、体位の調整

看護師ができること
・・口腔ケア、
30~45度上半身を挙上した体位
(仰臥位を避けて胃内容物や口腔内のものが
気管内に流入しないポジショニング)

◎酸素中毒

原因・・高濃度酸素投与

予防・・PaO2を80~100mmHgに保つ、
最小のFiO2を選択する

看護師ができること
・・血ガスの値を確認、報告、全身状態の観察

◎無気肺

原因・・痰の貯留、気道出血、
気管チューブの位置が不適切で
気道の閉塞や不十分な肺の拡張

予防・・PEEPをかける
痰の吸引、体位ドレナージ
深呼吸

看護師ができること
・・痰の吸引(痰の性状や量も観察、必要時加湿なども考える)、
体位ドレナージ
深呼吸を促す、Drへ報告

◎気胸

原因・・肺が過膨張して破裂した肺胞から
空気が侵入した

予防・・一回換気量・気道内圧が高くなり過ぎないよう設定
鎮静・鎮痛

看護師ができること
・・指示通りの設定か確認、モニタリング
強すぎる咳嗽でも気胸になるため
適切な鎮静や鎮痛が行われているか観察し報告

◎循環動態の変動

原因・・胸腔内圧や右房圧が上昇して静脈還流が低下→血圧低下

予防・・PEEP・換気量を下げる、輸液負荷

看護師ができること
・・バイタルサインの変化、モニタリング
Drへ報告、体位変換時はより丁寧に

今回は以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

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